現役10年以上のデザイナーから見た通信制の美大・デザイン系スクール

私の本業はグラフィックデザイナーです。装丁やWEB制作などのお仕事で「プロのイラストレーターに仕事を発注する側」です。そんな現役デザイナーが、今になって京都芸術大学という美大に入学しました。兼業大学生!!!

プロフィールページ(ABOUT)でも少し触れているのですが、

プロのイラストレーターとしてイラストのお仕事をする、本を出版する

これが、私の目標です。ただし、大学に入ったのはそれだけではありません。美大に入れば絵のプロになれるという保証はまったくないですし、むしろ、通信制の学校にちょっと懐疑的だった私がどうして美大編入を思い切っちゃったか?って、順を追って説明しますね。

管理人

最後の段落ではちょっといい話も書いてます。

INDEX(この記事の目次)

学歴ないままデザイン事務所に入った頃

現役のグラフィックデザイナーですが、私は美大や専門学校は出ていません。フリーランスになって長いので近年の事情は断定できませんが、それでも私の知る限り、ほとんどの(特に東京の)デザイン事務所では、美大や専門学校でグラフィックを学んでいない人間はデザイナーとして雇うことはありません。常に即戦力が必要だから、です。

無学な私がデザイン事務所に入社できたのは、人脈と運と、デザイン事務所のアルバイト(お茶汲み!)で作ったポートフォリオがあったからだと思います。人脈といっても、とにかくグラフィックが好きだったので、その名のつく展示会やイベントにあちこち顔を出していた、という程度ですが、それでも当時の私には有益なことでした。

次第に仕事も任されるようになった一方で、常に学歴コンプレックスは付きまとっていました。当然ですが、同僚全員、外注先や美術館などの取引先クライアントも美大や専門学校出身ばっかりで、技術は腕でカバーできても、頭や心が追いつかない日々でした。なけなしのお金を費やしてアトリエに通ってみたり、学費をローンで組んで美大やWEB系の専門学校が主催する講座やワークショップにも数えきれないくらい参加しました。そのおかげでHTMLのコーディングができるようになり、実務に結びついていましたが、「できること」が増えても「やりたいこと」からどんどん離れていっている気がしました。

招待制のデザイン系組合にも「美大出身ではない」という理由で断られたことがあります。

以下、2021/09/15追記:

「デザインやイラストの仕事をするのに学歴なんて必要ない!」っていう意見もよーく耳にします。それは、ぬくぬくと学生生活に浸ってても仕事の現場で戦力となるスキルやセンスを磨いていなきゃ卒業後採用されないからっていう意味ですよね。たぶん。それは、先に書いた通り、美術系の学歴がまったくない私が人一倍長い下積みでカバーできたことなので、一理あると思います。

要は、どんな環境で学ぼうとも(通学制の美大、通信、専門学校、独学、社会人学生)最終的には、どんな職種でも仕事に必要なスキルが身になっていることが採用されるために必要最低条件なので、

  • どういう職種・仕事内容に就きたいのか
  • その仕事ができる会社はどこか
  • その会社のその職種に就職するために必要なスキルは何か
  • その部署に在籍中の先輩やOB/OGの、作品の画像やスキルに関する記事はあるか
  • 関連する書籍は何冊存在して、そのうち面接までに何冊読めるか
  • スキル以外にアピールできるものは何か(アイデアのひきだし、ポートフォリオやSNSの使い方、コミュ力など)
  • 以上をひっくるめて、スキルやスキル以外のものを体得できる環境はどこか
  • その環境に必要な時間とお金は、現在の自分の身の丈に合っているか

叶えたいゴール(就職や独立)から逆算して、そのゴールに必要なものを体得できる環境を探して、最終的には自分で取捨選択していくことが大切なんだろうと思います。年代や性別、職種や会社によっても尺度は違うので、自分で納得できるまでひたすら調べるしかないです。自分の夢っていうのも自分にしかわからないですし。それと、今現在の自分の時間やお金との兼ね合いもすーごくだいじです。機材揃えたり、時間作ったり、ゴールへの貪欲さがないとできないかもです。

ちなみに、就職や独立をゴールって書きましたけど、実は「第一のゴール」っていうだけで、そこは同時にスタート地点になります。就職や独立したあとの方が何十倍も試練があるので、どうぞ、今のうちにゆっくりくつろいでください(笑)

— 追記終わり

専門的な学部の人たちの姿勢に圧倒される

一人前にお仕事を任せてもらえるようになっていった、とはいえ、時々、焦ることはありました。

それは、自分より若い世代をインターンや部下として雇うようになった頃、特に、専門生の『絶対この作業工程をモノにしてやるぞ!』みたいな気概、エネルギーに圧倒されてしまうことが何度もありました。私が写真の撮り方を説明すると、ひとつの工程ごとに百個くらい質問してきたり。そういう熱心さに感心していると、他の子は、突然デスクの上に登って、妙な格好してラフスケッチを始めたり。ラフって言ってるのに完成に近い案をいくつも出してきたり。今思うと、なんだか部室みたいな賑やかな事務所でした。(私は大学で写真部だったので、毎晩遅くまで写真を焼いたり水張りしたり、遊びと作品作りのごっちゃまぜの日々でした。)
本人たちに話を聞くと、周りの同級生はもっとデザインに狂ってるとか。私の場合、学費が国立並みに安いという理由で大学を選び、“大卒”という資格を得るためだけに行っていて、周囲の友人もほとんど同じ感覚だったので、専門ともなると気合いの入りどころというか、もう人種が違うのかな?くらいに驚きました。

デザインの講師になる、かもしれない

事務所を2つ経由し、フリーランスになった今、おかげさまでグラフィックデザインのお仕事は、間を開けることなくずっとご依頼をいただいています。最近は、特にWEB広告を絡めた企業ブランディングの案件が増えているのですが、そのお仕事でご一緒したWEBプロデューサーから「専門学校での講師の仕事に興味はないか?」とお声がけいただきました。

いま、多いですよね。デザインを教えるっていう学校

二十歳前後くらいの体力も時間もある若い子なら全力投球できると思いますが、責任ある仕事に就いている会社員や育児に追われている方々が『隙間時間に・片手間で』習得できるような謳い文句の学校には疑問があります。疑問、というより、そんな簡単に習得できるとは現場の人間としてとても思えない。というのが正直なところです。「収益化」の記事でも触れていますが、安直なデザインが世に広まることに、私は賛成できないな〜という立場ですし。

でも、中には真剣に、ひとつも漏らさずに学ぼうっていう生徒がいるのも事実です。あえて学ぶカテゴリーを専門的に狭めて突き詰めようとする学生のエネルギーを間近で感じて刺激を受けたのもあって、専門学校に興味はありました。

あるいは、少しハードルを下げて、「生涯学習としてのデザインやイラストレーション」というとどうか。例えば、デザインに価値を見出してくれる大人(経営者側も、クリエイター側も)が今よりもっと増えたら、本当に優れたデザインが溢れる世の中になるだろうし、デザイナーも人を雇うような余裕が生まれて睡眠時間を取れるようになる。かもしれない。

期待も疑問もあるけど、まず「学校を体験しよう!」と思ったのが入学のきっかけのひとつです。
自分が講師になるかどうか、はまた近い将来に、悩むとして。

どうして「イラスト」なのか?

入学前の入学説明会や1日体験授業を受けた時、私の想像をはるかに超えた豪華な現役講師陣とカリキュラムだったので、『本気出さなきゃやばいやつ』って感じはジンジン伝わってきて、日ごとに期待値UP。
(zoomを使った説明会は11月と3月の2回参加)

京都芸術大学は講師陣が神絵師ばっかりだから!っていうのもありますが、「なぜ現役デザイナーが今更イラストなのか?」というのは、このWEBサイト全体を通して伝えていきたいと思っています。

管理人

ひとことで言うなら「絵を描く人になりたいから」なんだけどね!!

“畑違い”のちょっといい話

サムネに「読むデザイン」なんて副題をつけてしまったので、最後にちょっと有意義なことを書いておきます。東京の小さなデザイン事務所で10年以上働いてきた私が知ってる限りの話で、です。

グラフィックデザイナーイラストレーターは似たような業界に思えて、実はほとんど接点がないです。個人的に同じ大学出身とか、少し大きい事務所なら同僚…のような小さな接点はあるかもしれませんが、もう少し俯瞰して見ると、グラフィック畑の人たちはいつもいつもイラストレーターを探しています。時間内にいい絵師を探しきれなくて、結局、知り合いのツテを頼むってこともよくあります。私がこれまでに実際の案件でご一緒したイラストレーターさんは総勢12名。その12名を選抜するためにお顔合わせした方も合わせると、その3倍近いイラストレーターさんとお会いしました。

pixivが普及する前まではイラストレーターを探す手段は出版物しかありませんでした。というのも、イラストレーターさんは自分のサイトを持っていない人の方が多数で、ネットサーフィンで出てくるイラストレーターはいつも決まって同じ人ってことがあったのです。pixivさん、生まれてきてくれて、ありがとう。

最近でこそ、絵師はTwitterが主戦場だと知ったのですが(→くわしくはこちら「イラストレーター同士の交流」の記事を参照)それも私がイラストを始めてから知った事実です。グラフィック畑の友人はやっぱりその事実を知りませんでした。どちらかと言うと「instagramじゃないの?」という反応です。私も、以前はインスタで絵師を探していました。

イラストの仕事って、ゲームや出版物以外にもそれこそ無数にあるんですが、そのことをイラストレーターさん側もたぶん知らないこともあると思っています。

例えば、私がいままで扱った案件だと、
出版物以外で)

  • 企業のブランディング(ロゴ、カタログ、DM、パッケージ、イベント販促品)
  • 広告(ポスター、CM、新聞・交通広告など)
  • WEBデザイン、ランディングページ、広告バナー
  • プロダクトデザイン
  • 店舗デザイン(店内サイン、ユニフォーム、看板など)

デザイン案件は1つしか成果物がないということはなく、たいていが複合的で、現場ではデザイナー以外にも複数の人が動いています。特に決まったフローもないので、いつ、どのタイミングでイラストを発注するかもわかりません。そういう現場なので、イラストレーター側から狙って仕事をとることは難しいかもしれませんが、「デザイナーとつながっている」というだけでも大きなチャンスだと思います。

ちなみに、今現在の私は広告代理店の仕事はほとんどしていません。なので広告業界についてはここで言及しません。上記の内容は広告代理店が関わらない案件です。(そんなのいっぱいあるのよ!)

もうここまで書いたらわかると思いますが、私(=グラフィックデザイナー)がより多くのイラストレーターさんと知り合う場なんて、ほぼないわけです。今までもこれからも。今となってはpixivアカウントもすごい数ですし。積極的にTwitterで絡んでいけばいいのですが、そういうの疲れちゃうし、イラストレーターさんも急に出版社や広告代理店の人間ではない“知らない人”からコンタクトきたらびっくりしてしまうだろうし。

だから、どっちの業界でも話が通じるっていう人間を目指そうと思いました。グラフィックデザイナーがイラストレーターを探す際の架け橋みたいな?(手段はまだわからないよ!)そのためには、私自身がイラストレーターの業界のことをもっと知らないといけないし、私のことも知ってもらわないといけませんね。

2021/06/03追記:リンク追加。

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