春期の課題提出が終わりました。6月は春期の講評・振り返りと、夏に向けての準備です。
今回は、春期の最初に仕上げた課題について記事にします。
記事タイトルに「受講ノート」と書きましたが、講義の詳細は公開できないので(*注)、受講中のメモ、授業以外で調べたこと、課題作品のメイキングなど、私自身の復習用にアーカイブいこうと思ってます。
*注:©京都芸術大学ガイド『著作権について』
記事が長いので目次使ってくださいね。
画像多いのでWi-Fi環境での閲覧を推奨します。
デジタルイラスト初心者が最初に受ける講義|デジタル演習A1
さて、最初の講義は、Clip Studio PAINT(以下「クリスタ」)の基本操作です。
実際にクリスタを起動してイラストを描きながら、が良さそうです。
乃樹坂くしお先生のご紹介
くしお先生はデジタルイラストの入門書をいくつも出版なさっている名実ともに神絵師先生です!
描画ソフトの〈使い方〉についての考え方
この段落は授業内容に関係ないです。私が思う、初心者なりの心がけみたいな話。
調べ過ぎると、かえって激ムズ
描画ソフトは使い方を調べれば調べるほど複雑になっていきます。なので(私の個人的な考え方ですが)はじめのうちは詳しい使い方を気にせずに直感でペンを動かす方がいいと思います。ブラシの種類や合成モードなどの詳細を知らなくても、ひとまずデフォルトのブラシやペンを使って絵を描くことはできます。
描いていくうちに「ああしたい」「こうしたい」という段階が来るので、その時になってようやく公式サイトのTIPS(具体的な作例を使ったハウツー講座)で自分がやりたいことを叶えるヒントを探すと、一見、遠回りのようですが、おそらく描画ソフトの使い方を体得するには近道だと思います。
TIPSなどを見ての通り、描画ソフトはいろいろなことができる機能満載なので、初心者にとっては「何用?」という謎が多いです。自分の描きたい世界観に不要な情報もあるでしょうし、何よりやる気のハードルが上がってしまいます。
例えば、レイヤー合成の効果の度合いを数値で表しているTIPSがありますが、正直言って「50%明るくなる」と覚えてても、役に立つと実感できるのはもっとプロ級になってからだと思います。
かくいう私も、Adobeを10年以上仕事で使っていますが、「乗算」が何%暗いかなんて気にしたことはありません。『学術的に目の錯覚が起きて正確な描画ができないから数値で裏付けの必要がある』なんて状況もあるかもしれませんが、少なくても自分の目が信じられるうちは、見たままのデータを生かしたらいいんじゃないかなって思います。
頭で理論を覚えるよりも、手の感覚で体得していく、というかんじに近いと思います。
プロの作例データを解体
私の場合、例えばPhotoshopを触り始めた当時はYoutubeなんてなかったので、プロによる完成された作例データが収録されたハウツー本を購入して作例データの解体をやってました。社会人になってからもしばらくはお茶汲み以外にやれることがなくて、先輩デザイナーのデータを解体してそっくり完コピできるまで続けていました。
ハウツー動画も充実!
描画ソフト公式サイト以外にも、プロのイラストレーターさんがハウツー動画を公開しているので超オススメします。仕事で10年以上Adobeを使っている私でもいまだに知らないことだらけで、本当に奥が深いです。
今の時代は動画でプロのリアルな手の動きが見られるので、すーごく便利ですね!
Clip Studio公式TIPS
https://tips.clip-studio.com/ja-jp/official
Adobe Photoshop公式チュートリアル
https://helpx.adobe.com/jp/photoshop/tutorials.html
ディープブリザード先生のYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/DB/
ラズメ先生のYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/lazme_club/
イラレ職人コロ先生のYoutubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCEEBipG3E8ZLnbGha2PIc1Q/
知って得する便利な機能
下描きレイヤー、下描きフォルダ
これは知らなかったです!確かにバケツで塗りつぶしする時、下絵の線が邪魔になったりするもの。フォルダごと下書き設定できるし、あと、配置した写真も下書き扱いにできました。今回の課題では写真を使ったのでこれは有益でした!
しかもこの下書きレイヤーは、最終出力の際、非表示なります。

クリスタのデータサイズを小さくする
提出するデータは20MB以下でないといけない。仕上がった作品は70MBもある!

困った。
いろいろ調べました。データを小さくするやり方は、大まかに4つ。
- 可能な限り解像度を低くする。
- 余計なレイヤーを消す。特に全面的に塗りがあるレイヤー。
- 「キャンバスサイズ変更」で何もしない(後述の解説A)
- 「新規」でフォルダやレイヤーをコピペ(後述の解説B)
解説A:「キャンバスサイズ変更」で何もしない
編集メニューから「キャンバスサイズを変更」を選択して、何もしないで「OK」して保存。


解説B:「新規」でフォルダやレイヤーをコピペ
コピーしたいフォルダ(またはレイヤー)を選択した状態でコピーし、新規キャンバスを開いてペースト。この時、新規キャンバスは元のキャンバスと同じサイズが良いですね。タイムラプス(※1)の録画をONにしていた場合もおそらくこの新規コピペでタイムラプスのデータが消えるんじゃないかと思います。


※1:Ver.1.10.5対応新機能「タイムラプス」についてはこちら:
課題作品の制作過程
トータルの時間
約20分×15章の講義+課題制作(没案70時間以上+本番案20時間)
没案の方が時間がかかったのは、初めての厚塗りに挑戦して何度も描きなおしていたためです。
「没案」を見せちゃう!
こちらが没案です。左からアニメ塗り、厚塗り、水彩・・・といろいろ試しました。一番はじめ(アニメ塗り)の段階で線画を太く描きすぎて、厚塗りのさいに色トレスをしても線画が不自然に目立ってしまった。何度目かの正直に、水彩でやり直しをはじめたものの、途方もなく時間がかかりすぎていて、課題本来の目的を見失いかけていたので、中断しました。


これはこれで、時間が経って見ると好きかも、と思えてくるので不思議です。「塗り」のゴールが見えないので、作業当時はただただ苦痛でした。小学校の美術の授業以来、油画や水彩をやったことがなかったので、固有色以外の入り方、特に白い花の仕上げがイメージできなくてこの案は諦めることにしました。
本番イラストメイキング
新しい案は描き始めたら2日であっという間に終わりました。
もう全体講評も終わりましたし、せっかくなので私の課題作品を公開します。クリスタのタイムラプスは録画していなかったので静止画でのメイキングになります。
クリスタの基本操作を修得するための課題ということもあり、他の課題とちがってトレースが条件でした。写真はもちろん自分で撮影したものです。


あとに来る「塗り」の工程を考え、線画は具材別にレイヤーを分けます。(卵、お肉、野菜、ごはん)
自分らしい線画ってなんだろう?と考えましたが、今回は最終的に色トレスをして線を目立たせなくする前提なので、前回(没案)の失敗を生かし、太い線は避けました。





時間が経って今思えば、太い線でも味が出てよかったかも。
色はスポイトで明るめの部分から抽出。あとで影を足していくのでベースの色は明るめ。


いろいろなブラシを試した結果、水彩ブラシのごわごわした感じを生かして、ひき肉のダマ感、重なり(影)を表現することでお肉の質感を出すことにしました。


この影レイヤーはあえてレイヤー合成をしていません。理由は、ブラシを重ねていくとどんどん黒になっていくのですが、完全な黒にしてしまうと美味しくなさそうだし、あくまでも茶色の色味は残しておきたかったので。
でも、塗りは「乗算」です。下図のように重ねて塗ると下の色を打ち消さないので赤みを足したりできます。
このごわごわした水彩ブラシは、クリスタに標準で入っている「粗い水彩」です。ひき肉のボロボロした質感にぴったりかなと思いました。筆圧でも色が濃くなりますが、さらに乗算して深み(奥行き)を出します。


野菜の陰影、目玉焼きのフチの焦げた部分や白身の凹凸もSTEP4と同じ水彩ブラシを使用。具材同士の境目(たとえばひき肉と野菜の重なる部分)は馴染むようにそれぞれの具材の色を混ぜたり重ねたりしています。
本物に近い表現をするために、卵の黄身のグラデーションは均一ではなくちょっとマダラになるようにブラシを動かしています。白身に落ちる黄身の影やその境界線も実物を見ながらちょっとぼかしたり反射した色をまぜています。


野菜の影はレイヤー合成「乗算」で下地の色に重ねます。お肉と違って、野菜の様々な色(赤・黄・緑)に影響される影色は茶色一色ではないので、乗算で下地の色を加味したいと思いました。
お米の粒は、ベースカラーをのぞいて一番明るい色から順に濃いグレーまで4色で階層ごとに塗り分けました。なるべく隣り合わせで色が同じにならないようにバラバラ塗ってます。バケツ塗りならあっという間です。たぶん10分もかかっていません。線画はこの塗り分けた色に合わせて、最後に色トレスします。


お米の色を塗り終わったら、お肉の影をお米全体に乗算していきます。
Gペンでハイライト。レイヤー合成「スクリーン」(下地の色を明るくするという効果)を使っています。
油の乗ったところはもちろんですが、米粒にもハイライトが効いています。


講評後の反省
ちょっとリアル過ぎたかなぁ…と、今見返して少し反省してます。くしお先生による「全体講評」というのがあって、提出した生徒の何作品かを講評してくださるのですが、それを見て思ったことは、もうちょっと私も「私らしさが出る描き方」を考えれば良かったかな、と。
確かに、課題概要に「自分の絵柄となるよに線画を工夫して」ってあるじゃない!
添削が返ってきて、トラブった話
既に別の記事でも触れていますが、今回の「デジタル演習A1」では添削がなかなか返ってこない問題(正確には、私の作品ではない作品への添削が来ていて、私の添削どこいっちゃったんだろう?問題、です。)で、ヤキモキ…はしてないんだけど、モヤモヤしていました。
このまま私のガパオライスは浮かばれずに消えてしまうのか…と思っていたら、先生からお手紙いただきました(T^T) なんとまあご丁寧に。ありがとございます。ただし、6月末の時点でもう春期の動画や講評は開くことができない。手紙には「airUにアップしておきました」って書いてあるけども!



え?見れないじゃん?
タイミング悪くないですか?
「春期が終わって講評が見られない」の解決
さて、ここで問題です。私はどうやって解決したでしょうか?
A)コンシェルジュにお問い合わせする
B)先日届いた研究室からのメールに返信する
C)Discordで同級生の誰かに聞く
D)諦める
実はAもBも途中までやりかけていたんですが、正解はCのDiscordでした。私が質問する前に答えを書いてくれた方がいたので即、解決。ありがたい!大感謝!モヤモヤがヤキモキに変わらずに無事、平穏に過ごせました。
その方法は以下の通り。
春期の講評を見る方法
パソコンもスマホも基本は同じで、
マイページ>「成績」メニュー>「評価」の数字をクリックすると添削結果やコメントが閲覧できました。


パソコンはMacのSafariとChrome、スマホもiOS14.6のSafariで確認できました。(2021年7月5日時点)
では、課題の考察いきましょう!
まだ「デジタル演習A1」の課題を制作していない方へ:
この考察を読むことで予期せぬ固定概念や誤解が生まれてしまう恐れがあるので、ここから先の閲覧はオススメできません。
あくまで、私個人が自分のために課題と向き合ってる考察なので、ご理解ください。
評価の内容
今回の評価は以下の通りでした。シラバスや課題の詳細はオープンにできない(*1)ので内容をかなり端折っていきます。
添削いただいた内容を私なりに解釈すると:
ご飯のシズル感○、レイヤー合成がうまく使えた。ただし、第三者にもわかりやすく(レイヤー名につける具体的なネーミングなど)もっともっと丁寧なデータ構成をしよう。
独自の作品としての価値を高めている
まず、高評価をいただいた「レイヤー合成」について考察。
正直に言って、描いていた当時、レイヤー合成だけはあんまり評価されないと思っていました(真逆!!)。なぜかというと、お肉は合成してないんですよ(→5章メイキングSTEP4参照)。このメイキングを見ればお肉だけレイヤー合成していない理由は明白ですが、普通はなぜここだけレイヤー合成してないのかって減点対象かもと思ってました。
改めて見ると、ハイライト(→メイキングSTEP7参照)は、実際の写真より効果的に表現できています。
特に「卵黄」は、写真にないハイライトを入れてるんです。実はこれ、塗り過程の偶然の産物だったのですが、色が薄過ぎてレイヤー合成じゃないと出てこない。写真では壁の色が黄身に写り込んでいる箇所がごちゃっとしているので水彩ブラシでササっと引いた結果が、これでした。


あとはやっぱり、お米の粒感や野菜の照り感をハイライトで描けたのがよかった。→メイキングSTEP7参照。
あ!そうコメントにも書いていただいてますね🥰
では、その他の観点については?
課題に「自分の絵柄となるように線に強弱をつけるなどの工夫をしてください」という指示があったように、上手く描くことが全てではないということが分かります。私ら学生だもの。
単純にAがSに劣るということではなく、Sという評価はきっと想定できる結果以上の価値を表現できたから特別点が加算されたっていうかんじではないだろうか?と。お米や卵黄のハイライトの表現で得られた結果は、正直、自分でも描く前に想定できたものではありません。
逆に、レイヤーマスクやクリッピングマスクは、当たり前の使い方しかしていないので、S評価まで昇華できる内容ではなかったということ。むしろ、どうしたらSになるのか、を教えて欲しいくらいです。



今更全体講評は見られないので、
くしお先生の本を買いました!
(作例データ狙い)
レイヤーマスク
レイヤーマスクは「後でトリミングの形を変えるかもしれない」という場合に使います。
例えば、人物の切り抜きをする場合、髪の毛のような複雑な切り抜きでは、はじめに大雑把ににレイヤーマスクで切り抜いて後からブラシで細かい調整をする、みたいな。しかし、今回のようなトレースの場合、形が決まってしまっているので本来ならレイヤーマスクに頼る必要はない、と個人的には考えます。ただ、課題なので無理矢理お米のベースカラーをレイヤーマスクで覆っています。
強いてやるなら、お米よりお肉のレイヤーにレイヤーマスクを使えばよかったかな?
本の付録でついていたくしお先生の作例データ(レイヤーイキデータ)を解体しました。



これ、やっておいて損はないぞ!
やっぱりプロのデータはすごい!
くしお先生のレイヤーマスク使い方
- 下描きレイヤーで素体や服の余分な線を消す
- 上から足すベタ塗りレイヤーを部分的にグラデーションにしたり除外したりする
- メガネのガラスの曇りや反射の表現
- クリッピングマスクできない多重レイヤーにまとめて光の乗せ追加
- グリザイユ画法での着彩(ベースカラーを含む全般)のトリミング
- グリザイユ画法での服の模様や質感の加筆のトリミング
レイヤーマスクだけでもこんなに使い方がある!!!
先生の作例データを見ているだけでもレベルアップしそう。
クリッピングマスク
クリッピングマスクは「着彩」「色調補正レイヤー(Photoshopで言う“調整レイヤー”)」に使います。
あと、トリミング位置を後から変更する可能性がある時にもクリッピングマスクは軽くて使い勝手が非常に良いです。
今日のこの考察をやるまで、クリスタにも調整レイヤー機能があることに気づいていませんでした。(大きな収穫!!)Photoshopだとレイヤーパネルに調整レイヤーボタンがあるので直感的にできるのですが、クリスタだとメニューバーから選択するしかないっぽいですよね?慣れるまでは我慢、我慢。
あれ?でも色調補正レイヤーって「デジタル演習A1」ではまだ習っていない。たぶん。記憶が確かなら。
今回の課題では、私もクリッピングマスクを普通に「着彩」や「色トレス」で使っています。
これ以上のクリッピングマスクの使い方ってあるかな?
ということで、再び、プロの使い方を解体します。



再び、くしお先生の作例データから。
くしお先生のクリッピングマスクの使い方
- 着彩(影、反射光、ハイライト、グラデーション、前髪の透け感)
- 服の模様の加筆
- コンクリートなどの質感を乗せる
- 顔のメイク
- 線画の色トレス
- グリザイユ画法での下塗りに対する影、ハイライト、グラデーション、質感、模様の追加
と、まぁ、概ね、私が想定できた内容とほぼ同じ。(グリザイユ画法だけはちょっと違う。)
ただ、今回の課題では「影」「色トレス」でしかクリッピングマスクを使っていなかったので、もっと大胆に広範囲のグラデーションを使うとか、オリジナルキャラクターの絵を描いてトレース縛りを回避するとかすればよかったかな?
考察に2日間ほど時間かけたけど、クリッピングマスクのS評価への道筋は見出せませんでした。
先生は動画の中ではオリジナルキャラクターもOKっぽくおっしゃってたんだけど、課題概要にははっきりとトレースするように指示が書いてあってオリキャラOKと書いていなかったので、そこはもっとコンシェルジュに突っ込めばよかった。
次からもっとつっこんでやる!
(2021/07/05追記終わり)
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